美しいキャンプサイトを作る|引き算の方法とは?

目次

はじめに───

キャンプ場を歩いていると、派手なわけではないのに、ふと目を留めてしまう静かなサイトに出会うことがあります。

よく見ると、風景にすっと溶け込みながら、道具は本当に必要な場所に、必要なぶんだけ置かれている。

あの美しさは何かを加えることよりも、むしろ「余計なものを足さないこと───」から生まれているのだと、私は感じています。

使わない道具は出さない。光や音は必要最低限に抑える。動線を邪魔しない。

そうした「しない」選択の積み重ねこそが、“気配の薄い”美しいサイトにつながっていくのだと思います。

今回の記事では、私がキャンプ場で学んできた、そんな「やらない工夫」について、静かに紐解いていきたいと思います───。


モノを広げすぎない

私は以前、お気に入りのギアを全部出したくなる。せっかくなら「写真に残したい」───

キャンプを始めたばかりの頃は、そんな気持ちが先走り、サイトがいつもごちゃごちゃしていました。

一方で、ベテランの方のサイトほど、タープの下には“目的ごと”に物が分けられ、今使わないものは車内やコンテナに戻されている。

さらに、テーブルの上も「1カテゴリにつき1アイテム」くらいの感覚で絞られているのです。

また、箱や面の高さ・向きをそろえるだけで、視界の情報が自然に整い、「にぎやかさ」よりも「静けさ」が前に出ることにも気づきました。

それ以来、設営が終わった直後に10分だけ“見直しタイム”をつくり、「戻せる物」を一度戻すようにしています。

たったこれだけの“やらない一手”で、サイト全体の印象は驚くほど軽やかになるんです。


風景に合わない色を持ち込まない

強い原色のギアや派手な服装は、写真では映えますよね。

しかし、自然の中では、緑や土の色とぶつかってしまい、風景から浮いて見えることがあります。

アースカラーをベースにして、そこに差し色をひとつだけ添える程度─── そうすることで、サイト全体の輪郭がふっと柔らかくなり、背景とひとつながりになる感覚が生まれます。

さらにもう一歩、“ロゴやブランド面を正面に向けすぎない” という小さな工夫もしています。

かっこいいロゴを見せたい気持ちはありつつ、あえて無地の面を手前に見せる。

すると視界が静まり、ギア自身が主張するというより、風景の一部としてなじんでくれるんです。

色も、主張も少し抑えたサイトほど、焚き火の炎や朝夕の光、風のゆらぎといった自然そのものが引き立つ───

私にとっては、それが一番美しいと感じる瞬間なのです。


光を拡散しすぎない

夜の美しさを決めるのは、明るさの量ではなく、光の質と向きだと私は思っています。

サイト全体を照らそうとして、ランタンを何灯も高い位置に吊るしてしまうと、光が隣のサイトや木々にまで広がり、自然にあるはずの陰影がすべて消えてしまうんですね。

私が惹かれるのは、必要な場所だけを点でほんのり照らす光です。
たとえば──
・メインには、中くらいの明るさの暖色ランタンを1つだけ
・手元には、ローテーブルの下からふわっとあたる間接光
・足元の動線には、小さな誘導灯を静かに…

ベテランの方ほど、「サイト全体を昼間みたいに明るくする」ことは決してしません。

むしろ、明暗の余白を意図的に残す───

すると、焚き火の炎や、遠くの星明かりが生きるようになり、夜の情景がひとつの絵として静かにまとまるのです。

人工の光ではなく、自然の光に主役を譲る。
それだけで夜のキャンプは、ぐっと深く、豊かな時間になります。


音を環境に乗せない

静かなキャンプサイトには、やはり静かな立ち居振る舞いがあります。

私が意識しているのは、“できるだけ音を生まない段取りを組むこと”です。

たとえば──
・ペグやハンマーは金属音が鳴らないようそっと置く
・ファスナーの「開け閉めの回数を減らす」
・BGMは外へ響かせず、聴くなら自分だけに届く音量で

さらに、音が出る作業(テント設営や薪割りなど)は日中に済ませておく。
夜や早朝は、“静かな作業”に切り替えるなど─── この時間帯だけは、自然の音に自分を合わせたいと思っています。

そうした小さな気配りが、焚き火のはぜる音や、遠くから聞こえる虫の声といった“自然の音楽”がそのまま耳に届くのだと思います。

余計なノイズがない分、目の前の風景そのものがより美しく、深く感じられる──私はそう実感しています。


動線にはモノを置かない

キャンプサイトがごちゃついて見えてしまう一番の原因は、通り道(動線)が曖昧になっていることにあります。

快適で美しいサイトを作るには、テント・テーブル・焚き火台などをつなぐ「置かない通路」を最初に決めておくことが大事です。

たとえば──
・チェアから焚き火までの通路
・テーブルからクーラーボックスへの導線
・テントの入口から炊事場やトイレへ向かう道

こういった“行き来のライン”には物を置かない。このルールだけで、サイト全体に歩きやすさと視覚的な広がりが生まれます。

設営の前に「動線をどこに通すか」を考えておくだけで、ガイロープやギアの配置も自然と整理され、まとまりのある静かなサイトになります。


地面を綺麗にしすぎない

ブッシュクラフトに近い野営スタイルのキャンプ場では、掃除をしすぎないことも大切です。

落ち葉や枝をすべて取り除いてしまうと、自然のラフな表情が消え、逆に人工的で不自然な景色になってしまうからです。

大事なのは、火の始末など“安全に関わる最低限”だけを整えることです。

それ以外は、むしろ自然のままの質感を残すことを意識します。

そして撤収のときは、「来たときより、ほんの少しだけきれいに」を目安に、地面の地形や枝葉の流れを変えないように心掛けています。

こうしたやりすぎない姿勢こそが自然に対する敬意になり、風景と溶け合うサイトづくりにつながる── 私はそう思っています。


最後に───

私が本当に美しいと感じるキャンプサイトは、「工夫を盛り込んだ足し算」よりも、「手放すという引き算」から生まれている気がします。

・使わない物は出さない
・光は必要な場所だけ照らす
・音は自然に譲る
・動線はきちんと空けておく
・自然の形や線は、極力そのまま残す

どれも特別なテクニックではなく、「やらない」ことを選ぶ小さな判断の積み重ねにすぎません。

そして、キャンプの良さは、次の設営でいくらでもやり直せる自由さにあります。

完璧を目指す必要もない。少しずつ整えていく楽しさがある。

あなたの次のキャンプが、ほんの少しだけ静かで、ほんの少しだけ美しくありますように──心からそう願っています。

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